TL の今後はどうなるのだろう
LD は、TL がそのままの形ほしいと思ったわけじゃないだろう。グループ会社として単期黒字になったとしても、それでよしとはしないはず。少なくとも、買収費用の数倍に値するような価値を産むか、グループ会社とのシナジーで同じようなバリューを産まないと意味があったとされないだろう。だとすると、今後のシナリオとしてはどういう方向がありうるだろうか。
TL が現状のままビジネスを継続して、大きな動きがないとすると、単期黒字は来期もしくはその次の期では実現の可能性が高いだろう。しかし、それを継続的に維持しさらに拡大する何かがあるかというと今の手札のままでは難しいのではないだろうか。つまり、LD の満足を得られるためには、早々に大きな展開をチャレンジする必要がある。
しかしながら、そのようなチャレンジの芽はまだ見えない。
TL10D については、バンドル契約の成功や、WMPへの対応などでニューズバリューは維持しているものの、何か根本的な部分で有償と無償のはざまを埋める価値を産んでいるとは思えない。プリインストールの商談は進んでいるようだが、この市場ニーズはおそらく一過性のものに終わり定着できないのではないかと思われる。まだまだ Linux は普通の人が代替 OS として購入する不安のない OS にはなれていないからだ。BCN リポートでのシェア3位(XP,OSXに次ぐ)とは言うものの、店頭でのデスクトップ向け Linux が Lindows と TLD 以外は存在しない状況であればその収益性については体力を維持できるほどであるかどうかは疑問がある。店頭市場でのディストリビューションは、あくまで法人導入や案件導入を得るためのフラッグシップでしかないという状況は過去から変わっているとは思えない。案件導入はといえば、RH がない現状では商用日本語デスクトップとしてはほとんど唯一の選択肢であるという強みはある。
サーバーやDBは目に見える動きはないようだ。OSS RDBMS については、独立系やメーカーでの OSS 標準サポートが開始されている状況を考えると、下流工程までのサポートができない TL には魅力があるとは思えない。下流サポートを行うソフトウエアベンダで、標準的なソリューションとしてディストリビューション込みで扱ってもらえれば可能性はあるだろう。その時に TL の強みとなるのは、クラスタ、フェイルオーバー、DB多重化などの負荷価値商品群との組み合わせだろう。しかしならが、クラスタ、フェイルオーバー等は競合も多く、単独で成立させるにはさらに多くの資金投下が必要であるだろうし、ディストリビューションと一体のソリューションとしてもまだまだ負荷価値が不足している。QueryMasterは価格構成が高価すぎて OSS ソリューションで実装しようという案件には採用できないだろう。同じサーバー系で OEM ライセンスのみで今年からはじめた TLAS については、まだ何かを言える状態ではない。
さて、これらの手札を確認した上で、TL の今後のシナリオはどんなものがあるだろうか。それは、TL の内的要因によるものではなく、LD の動きにやむなく連動という方向となるだろう。
・1年くらいで LD 的な事業目標に達しないとの理由で改組が入り、サーバー事業系は解散、デスクトップ系は Lindows に吸収。TL のブランドは消滅。
・Linudows の本体事業がなんらかの理由でパンクする、もしくは LD の日本代理店の地位がなくなり、LD のディストリビューション事業は TLD をベースに変更。ブランドは存続するが、サーバー系事業は解散。
・LD の事業方向の変更で、Novell の SuSE ローカライズチームとして売却。売却先が日本Sunという可能性はおそらくないだろう。
なんだかありきたりの推測に落ち着いてつまらないな...
・デスクトップベースを早々に確立した後は、その血を Lindows に引き継ぎ、サーバー系ビジネスでオフィスソリューション系を狙う SuSE の後追いを行う。
これも実際には TL としてはイバラの道になるだろう。でも、Novell が本格的なアクションに出始めたら、格安クローンの2番手ソリューションとしては生き残れる可能性が高い。Novell の高コスト殿様商売体質がそのままLinuxビジネスになるのだとしたら、採用ベースで実質1番も夢ではないかもしれない。
LD 傘下になった事で、単期黒字では許されないという状況は、TL の事業継続にとってかなり苦しい条件になるだろう。これを挽回する手を打てるかどうかはまだ未知数ではあるけれど、少なくとも、これまでの TL のままであれば難しい。LD 的な血を入れて、高いリスクで一発チャレンジの動きをどちらの方向で行うのかに注目したいところだ。