ウェブ進化論

ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる (ちくま新書)

ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる (ちくま新書)

これは、わたしに向けて書かれた本ではない。読むのは時間の無駄だった。
でも、それは想定の範囲内のこと。
読み終わって1つわかったことがある。
わたしは自身のポジションは、先端と普通の間にあって、その間を普通側にトランスレートをする立場であると10代から考えてきた。マイコンの10代、BBSの20代、インターネットの30代もそういうことを念頭に仕事をしてきたし、30年たったいまでもそう思っていることに変わりはない。いまの仕事でもできるだけそのような結果を生むようにしている。
それは、この本の言葉でいうと、どちらかというと「こちら側」の人であるし、「不特定多数への無限大の信頼」はゼロに近いということだ。
しかし、大多数に比べれば、すでにだいぶ内側にいて、完全に「あちら側」だし「不特定多数への無限大の信頼」もしている方なのだなってことだ。
この本で残念なのは、オープンソースについての解説が十分になされていないこと。特にオープンソースの「不特定多数への無限大の信頼」の根拠になるべきピアレビューに触れていないことだろうか。オープンソースがすでに普通の人の日常生活や仕事のやり方を変えてしまっていることも触れてほしかった。
本の体裁や読者層の事もあろうかと思うが、はやり表面を足早になめているだけで、梅田さんの興奮は伝わっているものの、実際のインパクトについてボディブローを食らったような感じ(というより、知らないうちに心臓が機械に入れ替わってしまったかのような感じ)を実感として受ける読者は多くないのではないだろうか。おそらく一般的な読者より現場に近いところで実際に生活しているところから読んでも、本文からは、なにかリアリティが伝わってこない感じがしたのが残念だ。
おそらく、よく売れているのは、みんなよくわからないネット社会というものに何かしらの危機感や不安感をおぼえていて、その答えを得られるのではないだろうかという期待があるからなのではないかと思う。でも、この本の中には答えはないのだよな。どちらかというと、梅田さんという旅人が見て来た「あちら側」の見聞録のような感じなのだ。珍しい異国の話を楽しんで聞いて、わかったような気分になるという感じに落ち着かなければいいけど。そういう意味では同じ現象を違う立場から記述した類書がたくさん出るといいな。