「イノベーション欠乏症が日本を滅ぼす」 小林三郎・元ホンダ経営企画部長が講演

http://www.nikkei.com/article/DGXZZO46968130W2A001C1000000/

 エキスパートというのは、1を聞いて10を知る人だ。そのために一定の考え方ができてしまい、その外に出られなくなってしまう。

 仕事には2つのタイプがあって、95%はオペレーション。5%がイノベーションだ。企業の今日の収益は10〜15年前の経営陣の成果だ。現経営陣は、未来に向けて投資しないといけない。それがイノベーションだ。部長以上は3割、役員以上4割、常務専務は5割、社長は7割明日のことを考えなければならない。本田宗一郎氏は9割5分、明日のことを考えていた。「今起きていることは若い人にしか分からない」ともよく言っていた。年寄りは、過去の経験と知識のせいでバイアスがかかってしまう。分からない人が上に立つようになって、日本のイノベーションを止めているのだ。

 イノベーションにはリスクがつきもの。リスクをとれない40歳を過ぎた人がやるべきことは、イノベーションのマネージメントなのだ。

今は、若い人もリスクを取れない。
リスクのとり方を知っている年寄りのほうが手が早い。

 40歳を超えた分別のある頭の硬い人は、自分でやろうとせず若い人に問うことだ。若い人は知識がないから、思いつきで勝手なことを言う。9割9分は役に立たないかもしれない。そんな時は本質を問う。本質とは「答え型」と目を見るのだ。内容は分からないのだから、自分で判断しないことだ。型が良いと、イノベーションを起こす確率があがる。この「答え型」とは本質とコンセプトのことだ。

若い暇人はtwitterなんかにあふれているから、らくできていいね。

 コンセプトとはお客様の価値観に基づき、ユニークな視点で捉えた物事の本質だ。全員が理解できるようなコンセプトは論理的なのでだめだ。かといって、誰もわからなくてもクレージーということだ。1割くらいの人が分かるのが、いいコンセプトだ。いいコンセプトを作るには、感受性を豊かにすることだ。(1)現場に足を運び(2)「ワイガヤ」で異質な人と本質的な議論を繰り返し(3)試しにやってみる。失敗を恐れずやり続けることだ。

スピードアップしてきているから、一割も理解できるのかどうか...

 ホンダという12兆円企業をつくった先輩達に「イノベーションを起こすのに最も大切なものを1つ教えて下さい」と聞くと、9割の人々が「想いだ」と答える。

 宗一郎氏のリクエストは2つだけだった。「ホンダらしさはどこだ」「それは世界一か」――。これにみんなで応えた。

 40歳を過ぎると今のことが分からなくなってしまうが、若い人の話を聞いていると、それがちょっと伸びるのだ。

今のことってなんだろう。
多くの企業が伸びた時代には、今のことは人口構成の多い若者が作っていた。
現在は高齢者の人口構成が高い。

 社長、役員は新しいことは絶対分からない。でも上の人の仕事は、若い人にだまされてやること。いろんな人の声を集めてコンセプトを作っていくのが「ワイガヤ」だ。

 いま1番怖いのは、中国や韓国がイノベーションを始めることだ。はやくそこに気づいて、日本人がもう一度イノベーションをやらなければ生き残れない。