243 東京エレクトロンの決断 « 千秋日記

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しかし、この技術の進展は、半導体産業全体にとって決して朗報とはならなかった。数年ほど前に、私がIBM半導体事業の責任者から聞いた話は、極めて深刻な話であった。つまり、かつての半導体事業は、1ドル投資すれば3ドルの利益が得られたが、テクノロジーの進化とともに製造設備や建屋が、どんどん高価になって、もはや1ドルを投資しても50セントしか利益が戻って来ない時代になったというのである。つまり、最先端の半導体事業は、もはや良質のビジネスにはならないと言うわけである。微細化により世代ごとにチップの面積は2分の一となり、一方、ウエハーの面積は世代ごとに2倍となった結果、半導体の生産性は世代ごとに4倍となった。その結果、チップの単価はどんどん安くなるわけだが、一方、同じものが、一度に大量に生産出来てしまうために、大量に販売が見込めるプロセッサーかメモリー以外の半導体製品では採算が合わなくなってしまった。

それに加えて、製造設備と建屋は高度化に伴い投資額が高額化してきた。かつて半導体工場は1棟1,000億円と言われてきたが、今後は1棟1兆円の時代に突入する。そうなると、半導体事業で採算が取れるのは、プロセッサを主力事業とするインテルか、メモリーを主力事業とするサムソンか、半導体設備を自社で持たない企業の委託生産に特化した台湾のTSMLの3社しかなくなった。日本の半導体各社が、次々と統合を繰り返しても結果が出せず、廃業に追い込まれている理由が、ここにある。