デザインという古い枠は死んだ! MITメディアラボ副所長・石井裕さん(1)

http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20140128/258908/

石井:モノが余って消費者が成熟した先進国の間では、「デザインで差異化をして売る」というマーケティングが、そろそろ通用しなくなっています。そもそも、地球環境問題を考えたら、そこまでして限られた資源を使って新商品を無理矢理創り出すことにどれだけの価値があるのか。さらに言えば、デザインだけで差異化をすることでサバイバルしようという企業にそもそも存在意義があるかどうか。

石井:そう、未来に対する明確なビジョン(理念)、それが求められるのです。どういう世界を作ろう。どういう未来を作ろう。どうやって皆を幸せにしよう。そのためには何をしよう――そんな未来に対する明確なビジョンをまずは持つ。そのビジョンがあって初めて、本当に新しいもの、本当の新しいデザインが生まれてくる。

石井:AppleにしろGoogleにしても、こんな未来をつくりたい、というビジョンをまず経営者が持っているわけでしょう。で、それを具現化するために、製品やサービスのデザインがつくられていく。日本企業は、というと前年同期比の売り上げを伸ばすことにばかり気を取られている会社が多すぎる。つまりビジョンがない。となれば、デザインだってたいしたものが生まれるわけがない。

石井:この世界で空中高く飛んでいるのは、アマゾン、アップル、グーグル、フェイスブック、そういった企業群です。いずれも自分たちが創ろうとする未来に対して、明確なビジョンを持っている。そしてアーキテクチャー=構造そのものをデザインしている。結果としてヒット商品が出ている。KindleにしてもiPhoneにしてもAndroidにしても、あれ、単体の製品じゃないでしょう? アマゾンやアップルやグーグルがデザインしたエコシステム上のフロントエンドの「窓」あるいは「情報蛇口」のようなものです。