本年度のノーベル生理学・医学賞の解説
海馬にはこのような場所細胞がたくさん存在して、それぞれの場所細胞はそれぞれ別の場所を表現します。そして、このような場所細胞が集まることにより空間における全ての位置がカバーされることになります。このことより、脳は、海馬のニューロンたちの発火パターンから自分が空間のどの位置にいるかという情報を知ることができるのです。これはまるで海馬に空間を表現している地図があるようなもので、このことよりオキーフ博士は海馬に「認識地図」が存在するという考えを提唱しました[3]。
つまり、空間を正三角形で埋め尽くしたとき、その全ての頂点で活動するようなニューロンが嗅内皮質に存在したのです。このような発火パターンを持つニューロンを、モーザー博士夫妻は「グリッド細胞」と名付けました[7]。あたかも方眼紙のように空間に目盛りをつけているかのようなニューロンが、海馬の一段階前の領域に存在したのです。