[GDC 2016]VRを活用したオンラインコミュニケーションに潜む罠とは。「VRハラスメント」の危険性とその対策が語られたセッションをレポート - 4Gamer.net

http://www.4gamer.net/games/999/G999905/20160316117/

 Harris氏は,被験体Aに対して,持てる限りの技術を駆使して「不愉快な気持ちにさせよう」とする。
 だがこの実験は,意外な結果に終わった。Harris氏と被験体Aは,非常に楽しい時間を共有できてしまったのである。
 実験がHarris氏の予想に反する結果に終わった理由は簡単で,Harris氏と被験体Aは顔なじみであったからだ。被験体AはHarris氏の性格や日々の言動,癖などを把握しているため,Harris氏が被験体Aに不愉快な思いをさせようとしても,被験体Aは「何をまた馬鹿なことをして」と,大笑いするだけだった。

 実際にどのようなことをしたかの動画が流されたが,Harris氏の技術は“本物”であり,遺憾ながら「こういうことをした」と具体的に記述するのがはばかられる,文字どおりのハラスメント行為であった。そして,VR HMDを通じてそのハラスメントを受けた被験体Bは,困惑と怒りと恐怖が入り混じった顔で,「いったい何がしたいの?」と強い嫌悪感を示したのである。

 Harris氏はこれに対する予防策として「パーソナルスペースの境界線を,選択的に他者を排除する境界線とする」ことを提案する。
 メカニズムとしては簡単で,VR空間において,あるキャラクターが他のキャラクターのパーソナルスペースに侵入してきた場合,侵入してきたキャラクターを画面に表示しなくする,という仕組みだ。
 これはプレイヤーをハラスメントから守るだけでなく,ハラスメント行為そのものに対する防止策ともなる。というのも,ハラスメントしようとして接近する側も,対象のパーソナルスペースの内側に入った途端,目標としていたキャラクターを見失うためだ。